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2013年2月17日 (日)

シューベルト 冬の旅

ヘルマン・プライ 録音1984年

歌曲集「冬の旅」を 「24の絶望変奏曲」と呼んだ評論家がいるが,その通りだ。 絶望を主題とした変奏曲。 あらゆる絶望を描いてゆく。

プライのこれより若い時の録音を,繰り返し繰り返し聞いていた時期が,わたしにはある。 真冬の底のいま 「冬の旅」を久しぶりに聞いてみようと思う。

プライというと,まず陽気なフィガロが思い浮かぶ。 しかしシューベルトもとても大切にしていて,最後のコンサートは冬の旅になるかも知れないと言っていた。 心臓発作で亡くなったので,果たせなかったのではないか。

連作詩の歌詞は単純だが,かえってシューベルトにとって,彼の旋律で描くためには,扱いやすかったかも知れない。 D911と最晩年(と言っても31才で亡くなるのだが)の作品だ。

ピアノの音数は少なく,ピアニスティックではなく,ただの伴奏のようだが,途轍もなく深い内容を持っている。 最終曲の冒頭の分散和音には,絶望を超えた虚無が感じられる。

ストーリーは単純で,(たぶん)金持ちの娘を恋人にして,裏切られた青年が雪の中をどこまでも歩き続けるだけだ。 曲集の始めの 1/3 は,まだ彼の心の中に怒りの火がくすぶっているが,8曲目「かえりみ」以降は,時に幸せだった頃の夢や,偽りの希望が彼の心をよぎるが,絶望は物憂く,諦めに近くなってゆく。

そして24曲目の「ライアー回し」では,冒頭の分散和音が 哀しく美しく,美しく哀しい。 もう青年は死のこちら側にいるのか,あちら側にいるのか,聴き手にはわからないほどだ。

ライアー(ライエルと発音している)は,手回しの自動オルガン。 オルゴールのようなものだが,発音機構はパイプオルガンだ。

村はずれで,裸足の老人がライアーを回している。 老人の前に置かれた皿に金を入れる者はいない。 老人はいつまでもいつまでもライアーを回し続ける …

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音楽」カテゴリの記事

コメント

私の持っている「フィガロ」はヘルマン・プライじゃないんですけど、「こうもり」(シュトラウスの)の方に出ていました。喜歌劇なので明るい役柄で。
そのイメージからすると「冬の旅」はどうも正反対というイメージがあるというか、「冬の旅」といえば、私はフィッシャー=ディースカウを真っ先に思い浮かべてしまうんですが。久々に聴いてみたくなったのですが、でもうちの地方のような重く雲の垂れこめた陰鬱な冬の季節に「冬の旅」を聞くとある意味危険というか、オーストリアの冬も大体そんな感じ(ヨーロッパは大体そんな感じ)と思われるのでマッチしすぎてちょっと危険なんですよ。なので春になったらですね。

投稿: ニヤリ本舗 | 2013年2月17日 (日) 15:22

ま〜くのフィガロはベーム盤なので,プライです。 しかし,ベームってそんなに凄い指揮者だったんだろうか。 日本での人気は凄かったし,一度コンサート行ったけど。 フリッチャイ盤が欲しいよう。(古いにゃ。)

冬の旅は絶望の歌ではあるけれど,やはり青春の歌でもあるわけです。 だから,プライのひとつ前の録音のより若い声で歌われたアルバムが良かったと思います。

フィッシャー=ディースカウは欲しい気もするけど,怖いんです。 彼は隅々まで徹底的です。 そんな完璧な絶望を歌わてもなぁ ...

投稿: ま〜く | 2013年2月17日 (日) 16:38

ところで,ニヤリ本舗さんは何県なんですか?

投稿: ま〜く | 2013年2月17日 (日) 16:39

私のフィガロはエーリッヒ・クライバー盤です。というとこれまた何故というマニアックな感じですが、単にその前に買った「こうもり」がカルロス・クライバーだったから、じゃあそのパパのでいいやという安直な選択肢です。指揮者についてはじっくり語れるほど詳しくもないというか、あまり普通ではない変な趣味なんですよね(指揮者だけではないだろうという説もある)。
そして私は百万石の城下町といいつつ、一説によれば日本一晴天の日が少ないとも言われている地方なので、特に冬場に「冬の旅」は絶望的な側面ばかりがマッチしてしまって危険なんです。この冬場のおどろおどろしい雰囲気は太平洋岸にお住まいだとちょっとわかりづらいかもしれませんが。と考えると、日本って狭いようで広いですね。

投稿: ニヤリ本舗 | 2013年2月17日 (日) 16:57

エーリヒ・クライバーはメジャーだと思いますが,1955年録音のようなので,ぎりぎりステレオですね。

兼六園のあるとこですか。 大学に納品で行ったことがあります。 手鞠麩かわいいですよね。 豪雪地帯ではないという印象でしたが(冬に行った)今年は降ってるのかなあ。

ま〜くは仕事で京都の峰山に行ったことがあるのですが(天橋立を越えて行きます)朝出かけて,着いたのは夕方でした。 京都に日本海があるという認識をその時初めてしました。 とにかく遠いです。

大宮から遠く感じるのは,例えば 長野県の飯田,山形県の小国(米坂線)なんかですねぇ。 小国も真冬に行ったので,雪の壁の印象が強烈です。 田んぼに車が何台か落ちてました。 県外から来た4駆なんかがよく落ちる,とタクシーの運転手が言ってました。

投稿: ま〜く | 2013年2月17日 (日) 17:18

いや、場所によっては降ります。新潟の豪雪地帯のようなメートル単位の降り方はしませんが。
でも普通に雪は降るし、普通にアイスバーンになります(今日も道路がスケートリンクのようだった)。冬場はうちの地方でも田んぼに車が落ちていたりしますよ。というか多分雪国では普通に見られる光景だと思います。太平洋岸とかだとあんまりそういうのはないんでしょうか? 雪国名物? いやな名物ですけど(笑)。

投稿: ニヤリ本舗 | 2013年2月17日 (日) 19:58

太平洋側では,さすがに田んぼに車は落ちてません。

アイスバーン怖いですね。 いつか小諸の車坂峠(約2,000m)へ車で上がろうとしていたら,12%くらいの峠の途中で JRバスを先頭に車が数十台停まっていました。 3月だったかなぁ? 前日に異常なことに雨が降ったらしいのです。 結局,軽トラが上がって来て塩カルを撒き,黄色いパトカーの何人かに押してもらって「ゆっくり!止まらずに!」と言われて何とか上がりきりましたが,そのせいで山に入るのが8時を過ぎて,8時に開くビジターセンターのガイドの人に,どこへ行くのか聞かれ「今日は雪崩れの危険があるので止めてください」と言われたので,もしかしたらラッキーだった?

投稿: ま〜く | 2013年2月17日 (日) 20:42

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