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2011年7月13日 (水)

City of Thieves / David Benioff

このミス(このミステリーがすごい)2011 で3位に入っている作品。
しかし,宝島社らしく「このミス」の選考は偏っていて,なんでこんな作品が?というのが入っていたりする。
Roadrunner さんが絶賛したという理由で mika さんが読んですばらしいと言っていたので,お二人の書評は読まずに買った。

読後の感想は「これ,ブンガクじゃん!」に尽きる。 だいたい文学作品と言うのは具体的な作品を挙げるまでもなく面白いものなのだ。 でも,とにかくこの作品はミステリーの範疇には入らない。 気分が悪くなるほど残虐な場面もあるが,それは戦争そのものが残虐だからだ。

住民から Piter の愛称で呼ばれる,フィンランド湾に面した Saint Petersburg(サンクトペテルブルク)の,詩人を父親に持つ17才の少年 Lev が主人公だ。 父親は書いた詩のせいで,密告されて捕まって殺されたようだ。

ナチスの侵攻ですっかり破壊され,配給食料も殆ど無い街で人々は飢えて暮らしている。 ある日,空から死んだドイツ兵がパラシュートで落ちてくる。 ドイツ兵が持っているものをはぎ取っていると軍隊(組織名はちゃんと調べてないです)につかまって,刑務所に放り込まれる。 そのうち,明かりの無い真っ暗な雑居房に,Kolyaという逃亡兵も放り込まれる。 Kolya は永遠に饒舌であり活力がある。 頭に一発撃ち込まれそうな場面でも常にきわどい危険な発言をして,はらはらさせる。

翌朝ふたりは,何故か刑務所から出されるが,非常な権力を持つ大佐のもとに呼ばれる。 大佐の娘が来週の木曜に結婚式を挙げるのでケーキを焼かなければならないが,卵だけ足りないと言うのだ。 二人は食糧配給カードを没収され,朝食だけ食べさせてもらうと,400ルーブルのはした金を持たされ,卵を探しに行かされる。 闇市にも卵は無い。

ついに二人は,ドイツ軍の占領区域まで入って行く。

Kolya が特にごく些細なところまで人間として見事に描かれている。 勇気があって素っ頓狂で文学者になるつもりで,最初に書く本の題名も決まっている。
Lev のおののき,subtle な感情の揺れも伝わってくる。 スナイパーの少女も謎めいて非常に魅力的だ。

文章は平明で読みやすい。 ミステリーのように分厚いページ数も無い。 悲しいことは起きるが,話は一種のハッピーエンドで終わる。 全ての英語本好きにお勧めしたい。 cat

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